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これであなたの筆もピカピカに!書道筆の究極の洗い方

これであなたの筆もピカピカに!書道筆の究極の洗い方

(あの人の筆はなぜいつも綺麗なのか。)

書家
片岡 青霞
プロフィール


 書道を学んでいる人であれば自分の使用する筆の手入れは欠かせない。ふと隣を見ると、あの人の筆はいつも綺麗なことに気づく。自分の手元を見ると同じ筆を使用しているはずなのに毛色、毛並みが異なる。ここで疑問が湧いてくる。同じ筆を同じタイミングでおろしたはずなのにあの人の筆はなぜいつも綺麗なのか。どのようにして洗っているのか。という疑問がおのずと湧いてくるはずである。 書道筆の究極の洗い方に迫る。

衝撃度MAX!目が点になる筆の洗い方

筆の根元を口で吸う。最初は面白い冗談を言われているのだと思った。でも本当だった。

 書道筆を洗う際、最も墨がたまるのはダルマ(黒いプラスチック部分)と 毛の境目の箇所となる。目で見えている毛の部分は意外とすぐに墨は落ち綺麗にはなるが、根元の部分というのはなかなか墨がおりない。それもそのはず、各書道筆によって異なるが、毛の部分というのはダルマの中0.5〜1㎝程中に入りこんでいるのである。なので、この部分をいかに綺麗にすることができるかがカギとなる。最初に述べておくが、一度根元まで墨をつけた筆を完全に元の状態に戻すということは不可能となる。だが、筆の洗い方ひとつで綺麗な状態に保つことはできる。より綺麗に筆を洗えるようになることで良い書道筆を長く愛用することが可能となるということである。

 ネットやスマホで「書道筆 洗い方」と検索すると、書道を学んでいる皆さんが普段のお手入れでしている筆の洗い方が出てくる。 どれも正しい方法ではあるが、 全体を見て感じるのは、“そんなに丁寧に洗っていたら落ちる墨も落ちないよ。”という感想か。多くの人が目にするネットの情報なので、より詳しく丁寧に記載されていると思うが、洗い方が丁寧すぎるため筆が洗えていないという人が多くいらっしゃるのではないかと感じた。筆の洗い方の基本は、【大きな洗いから小さな洗いへ】大きな洗いというのは、 筆の毛を大きく開いてまずは根元の墨を大々的に落とすことからスタートするということ。最初から根元の部分ばかりをちょこちょこ洗うのではなく、大きな洗いをしてから小さな洗いをするということ。 筆を大きく開いてさばくような洗い方をすることで、まずは全体の墨を落とすということが大切です。根元の洗いはその後。

  書道を学んでいる人なら一度は考えたことがあるかもしれないこと。筆の根元の部分に墨がたまりやすいので、この部分をスポイトのようなもので吸えたらいいのにな…。そんなことを想像しながら日々筆を洗う。初めてこの方法を知った時、半分冗談を言ってるのかと思ったほどである。しかし、冗談ではなく皆が当たり前のようにやっていた筆洗いの方法があった。それは、根元の墨がたまる部分を口で吸い取り吐き出すという筆洗いの方法である。 

一流の大工が所有する工具品

一流の職人は用具を大切に丁寧に扱っている。腕がいい者で愛用する用具に敬意を払わない者はいない。

 書道筆の究極の洗い方として、根元の部分を口で吸い取る方法がある。 初めて聞いた人達からすれば、冗談を言われているような気になるのと、書道筆の根元を口で吸うことへの拒絶反応はMAXに近いものだと思う。しかし、 先ほども述べたように冗談ではなく本当の話である。自身の書道筆の手入れ方法は、まさにこのやり方を実践している。 なのでいつもきれいな筆を保つことができている。

 書道筆を洗う時は、必ず「ぬるま湯」を使用する。熱湯では毛質を痛め、自分の手もやけどしてしまう。キンキンに冷たい水は墨のおりが非常に悪い。筆洗い時は必ず「ぬるま湯」としている。また、一般的な筆は手で持って洗う。洗い場の底に筆を押し付けるような形にして洗う方も多いかと思うが、普通サイズの筆をそのようにして洗うことはしない。筆を押し付けることでダメージになるのと、筆に癖がつかないようにするためである。 根元まで吸って吐き出した筆もまだ乾燥はさせない。半日から1日ぬるま湯に根元まで浸しつけ置きをする。こうすることで、取りきれない墨が底に溜まるのだ。ここまでしてからようやく乾燥させる。大作用大筆は、24時間サーキュレーターをかけっぱなし1〜2週間。半紙用筆は自然乾燥としている。目で見えている部分の毛質はすぐに乾くが、ここでも根元の部分の乾燥は非常に時間がかかる。半乾きのまま筆を何度も使用することで筆はダメージを受ける。 分かりやすく言えば、お風呂に入って頭を洗ったのに乾かすことなくそのまま寝るようなものである。髪がバサバサで美しさが保てていないような状態となってしまうだろう。筆の綺麗な洗い方には一連の決まった動作がある。慣れてくればそんなに時間はかからないが、書道筆をまだ綺麗に洗えていない方からすると、どのぐらい時間をかければいいのか分からないことも多いだろう。

  書道の腕はいいのか。それともそうでないのか。見分ける一つのポイントに所有している用具を見せてもらうといいだろう。一流の大工が所有する工具は、 常に綺麗さが保たれているという。 刃がガタガタでは綺麗に板を切断することはできない。一つの工程の積み重ねによって家ができるのであれば、どのようなものが完成するのかは言うまでもないだろう。
 
 しかしここで気をつけなければいけないことがある。書道筆が綺麗な人こそ腕がいいからと言って素直に信用することは危険である。ほとんど使用したことがないような筆を前に差し出し、“ほら、私の筆きれいでしょ。”とナンセンスなことを平然と口にする人も普通にいるのだから注意が必要だ。

濃墨用と淡墨用

 現在、大人の書道教室ではほとんどの場合で墨汁を使用している。もちろん硯を使用することはなく、固形墨を磨ったこともないが書道をやっているという人は非常に多いのである。硯や固形墨のことに関して一切分からないため、もちろん筆に関しても知識が乏しい。そのため、非常に毛質のいい羊毛筆にも関わらず、何のためらいもなく墨汁をつけてしまうというアクシデントが起こる。これは筆に対する知識を持ってる人たちからするととてもありえないことではあるが、知識がないがためにできる行為とも言える。
 こだわりを持っている人の中には、同じ筆を二本おろし、一つは濃墨用。一つは淡墨用。このように分けて使用している人もいる。そのぐらいいい毛質の羊毛筆には、濃墨をつけたくないと思うものである。

 青瑤展開催時に、見る側によりリアリティを感じてもらえるよう作品制作時に使用した筆を作品横にかけておいた。 書歴が短い方は立派な筆に感動をするが、書歴が長い方は筆の綺麗さに目が行くように感じた。実際会場の中で、筆の手入れをどのようにしているかと質問をされた。“普通に洗っている。“と答えたが、この普通ということが人によって様々なものだから非常に厄介なのである。

最初は抵抗感あり。今こそ度胸が試される時

明治初期まで続いたとされる「お歯黒文化」。虫歯予防効果もあったとされ主に女性の間で続いた古い風習。

 何事も最初は初心者です。書道をはじめる時もいきなり上手に書けるなどということはありません。日々コツコツとした積み重ねをした先に得るものがあるのです。これは書道だけに限った話ではありません。最初は誰もが上手にできません。書くことも洗うことも。

  昔、お歯黒という歯を黒く染める風習があった。日本や世界各地において女性の間で流行った化粧文化である。説は様々だが、虫歯予防や歯を黒く染めることで独特な妖艶な美しさが見いだされることを強調しているのだとか。興味深いものがあったものである。 
 書道筆をピカピカに洗い綺麗を保ちたいけれど、お歯黒になるのはごめんだわ。とそんな声が聞こえてくるが、繰り返しにはなるが誰もが最初は初心者です。 そんな方法は冗談に決まっている。単なる笑い話であると思っていたけれど皆がそのようにして何の抵抗も無く洗っている。 今こそ度胸が試される時ではないだろうか。大丈夫、誰も見ていないので安心しよう。なにも家族が見ている目の前で大々的に披露しよう!とは一言も申していない。飲まずにしっかり吐き出すこと。間違えても飲まないように。根元の部分を軽く吸って吐き出す。ただそれだけである。 突然名前を呼ばれても、お歯黒の状態で振り向かないように。家族を驚かせないよう細心の注意を払おう。 これで今日からあなたの書道筆もピカピカになること間違いなし。

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