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書道教室開塾のために取り組むべきこと【5ステップ】

書道教室開塾のために取り組むべきこと【5ステップ】
(開塾するまでの一連の流れとは。)

書家

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片岡 青霞
プロフィール


 「将来、書道教室を開塾したい。」そのような夢や目標を掲げている人の多くが、このコラムに辿り着いているかと思う。書道教室をはじめるために必要な国家資格はない。そのため、言い方を変えれば誰もが今すぐに明日からでもやろうと思えば書道教室を開塾できる。このように聞くと、思わず苦笑いをしたくなる人もいるかもしれないが、資格が無いためそれができてしまうということは現実的なことである。しかし、理屈ではそうだとわかっていても実際には準備することやそれまでにどのような取り組みをしていけば良いのか流れを把握したい人もいるかと思う。今回は、書道教室開塾までに取り組むべきことに関して5ステップにて紹介する。

①書道教室を開塾することを「決める」

開塾するためにやるべき事はたくさんあるが、一番大切なことはまずは最初に「決める」ということ。photo by Pexels

  将来、この業界でやっていこうと夢や目標を抱いている人がまずはじめにやるべきことは、書道教室を開塾することを「決める」ということである。これにて話は以上。…と、言ってしまったらここで終わってしまうため、もう少し何かつけ加えていきたいとは思うが、この単純でとてもシンプルな「決める」ということを軽視しないことをオススメしたい。

 わたしが将来書道教室をやることを決めたのは21歳の時、まだ学生の頃であった。今から20年前というと年齢がバレてしまうが、この時に私は一つのことを決断した。28歳になったら書道教室を開塾してスタートを切るということを決めた。当時の年齢からすると開塾まであと7年の月日が残されていた。この7年の間に書道教室開塾のために何をしてきたのかということを述べていく。
 やることを決めるということは決断である。人生は、選択という連続の結果で成り立っているが、この決めるということを中心軸にしっかり据えておかないと時にフラつき自分の思うような理想を手にしないで終わってしまうことがある。当時、この開塾することを友人、知人、家族に話をするとものの見事に反対をされた。この時、自分の想いが弱かったり周囲の話をわたしが素直に聞いていたら開塾することはなく諦めていたのかもしれない。誰に何を言われてもこれでいく。という確固たる想いと情熱がなければ、少しやってうまくいかなければすぐに辞めるという選択をしてしまう。最初に決めてスタートを切るということ。物事をはじめる時に最も重要で大切なことだと考えている。

②学びのステップアップ

学びを続けることで時間とお金が必要以上にかかることになるかと思うが、ここで躓いているようでは書道教室の開塾は難しいと考えるべきである。Photo by Pexels

 将来、書道教室を開塾するということは、書道を人に教える側になることを意味している。そのため、自分の書における腕の向上は必須となる。書道を学んでいる人は世の中にたくさんいるが、一歩先を進んで開塾となると、あたり前ではあるが通常の人たち以上に書を学び取り組む努力が必要となる。 
 書の腕の向上を目指す上で、日々の臨書をはじめとして、毎月の教書へ出品することや、展覧会、公募展への参加などがあげられる。実際にわたしが取り組んできた内容としてこれらのものがあるが、これに加えて筆耕を学んできた。開塾後、小筆を学びの一貫として取り入れたい思いがあった。通っていた教室では筆耕がなかったため、筆耕専門の教室へ通い日々の学習にも励んでいた。当時、月謝は合わせて24,000円ほどだったと思う。

 公募展は展覧会と異なり全国からたくさんの書作品が集まる。優秀な作品へは賞が贈られることから少なくとも人と競ることになる。一番を取る必要はないが、教える側にまわりたいのであればある程度上位受賞の実績は必須と考えている。展覧会や公募展へはなるべく早くから積極的に参加をしていくこと。実績を積み重ねていくことで自分の力をつけていくことが必要となる。

③資金の確保

当時、最も忙しかった時で、本業(週5)+副業(週3)。休日(週1)。ここに加えて書の普段のお稽古や展覧会・公募展への参加をしてく。身体はクタクタだった。photo by Pexels

 開塾のためには、書道の学びだけではなく生活をしていくために必要な金銭を蓄えておく必要がある。わたしたちが生きていくために欠かせない衣食住。開塾をしてもすぐに生徒さんが訪ねてくれるとは限らない。認知や集客にはタイムラグが発生する。そのため、開塾前と後で必要な資金の両方を確保しておくことが大切となる。

教室運営のために必要なもの資金、家賃(契約+半年分)、広告宣伝費(チラシ作成など)、資料づくり、教材、HP制作、パソコン、プリンター、開業届、税理士(顧問契約)など。
備品関連ホワイトボード(黒板)、机、下敷き、座布団、書道辞典、書道備品(筆・墨・紙、文鎮)、お月謝袋、朱墨、墨池、ロッカー、棚、鉛筆、消しゴム、ゴミ箱、ティッシュなど。
教室運営のために必要な資金・備品一覧

 開塾前に必要な資金として、家賃(契約+半年分)、広告宣伝費、HP、備品調達などがあげられる。書道教室をどのような形式で開塾すらかにもよるため、自宅の空きスペースでやるのであれば家賃などはかからない。レンタルスペースや物件を新たに探してやるのであれば3ヶ月〜半年分くらいの資金は確保する必要がある。 
 開塾後に必要な資金として、上記のものに加えて経理代行費などが必要となる。個人事業主の場合、ご自身で記帳している方も多いかもしれないが、わたしは開塾当時から個人の確定申告や法人決算など税理士にお願いをするようにしている。

 このように、実際に開塾しようとすると少なからず資金が必要となる。そのため、開塾前の間に書道の学びはさることながらよく働き資金を蓄えておく必要がある。今、振り返ると10代後半〜20代にかけてよく働いていた。夢や目標があるからこそ頑張れたのであって、理由の無い貯金であればここまで頑張れていなかったかもしれない。開塾するまでにやるべきことはたくさんある。

④場所・エリアを決める

広い視野をもって物事を見てみること。人によって最も適した場所が必ずある。photo by Pexels

 書道教室開塾にあたりとても重要となるのが、どこの場所・エリアで開塾するのかという点である。わたしの場合は18〜27歳までの10年間、東京で一人暮らしをしていた。だが、開塾は地元の栃木県でやるということを21歳の時点で決めていた。まだ開塾もしておらず生徒0人の頃から皆で書が学べる環境をつくるということと、家を建てることまでがすでに構想にあった。そのため、先にも述べたが若い頃はよく働いた。そして、今も若いと信じたい。

 ここで疑問に思う人がいるかもしれない。なぜ、東京を選ばずに栃木を選んだのかという点である。普通に考えれば、東京のほうが人数も多いのだから集客にしてもやりやすいと考えるかもしれない。それは最もな意見だと思うが、わたしは少し異なる視点で見ていた。
 当時(15年前)、東京から栃木へ帰省するたびに車窓から移り変わる景色を眺めてはいい土地がたくさんあるなと感じていた。それにも関わらず、いい土地がそのまま手付かずの状態で放置されているように見えた。こんなにもいい土(土壌)があるのに、誰も耕すことなくそのまま手つかずになっているのはなぜなのか。ネットで「栃木県 書道」と検索をすると、僅かな書道関連が引っかかるだけであった。そのほとんどは、一体何年前に作られたWebなのかもわからず、やっているのかどうかも不明でどこか閑散としている状態であった。誰も名乗りをあげないならわたしが土を耕してみようかなと思った。既に賑わっているところでやるのであれば周囲の実績を見て参入することができるけれど、そうでない場合にはやや勇気がいるかもしれない。あの頃から10年以上の月日が経過し、栃木にも少しずつ活気が出てきたように感じている。

 書道教室開塾として、わたしの場合は最初に空き家を借りるところからスタートをした。昭和何年建築なのか不明なほどオンボロな物件ではあったが、駅近の利便性とわずかな駐車場、書道教室をやるには大変ありがたい物件であった。4年後に戸建てを新築し現在に至る。
 場所・エリアを決めるうえで、一つだけやってはいけないことがある。それは、師匠と同じエリアや近隣で書道教室を開塾するということ。師事している方がいるのであれば、これをしてしまうのは御法度となる。この点だけは注意をしよう。

⑤開業届の提出

個人事業の開業届出書 Photo by photo AC

 書道教室を開塾することを決めて、自身の学びのために書における時間とお金をたくさん費やし実績を重ねてきた。資金を蓄えて必要な準備をととのえ、場所・エリアも定まった。いよいよ、開塾となる。

 多くの人は個人事業主としてやられる方がほとんどだと思う。個人事業主とは、自ら独立して事業を営む人のことである。これまで、企業や会社に雇われてお給料をいただいていた人からすると、不思議な感覚かもしれない。これからは、自分で商いをして自らやっていくということである。
 個人事業主としてスタートをするにあたり、是非取り組んでほしいことが税務署へ「開業届」を提出することである。開業届は事業を開始した一ヶ月以内に提出となっている。これを届け出なかったからといってペナルティーなどは特にないが、個人事業主としてやっていく心構えの一貫として捉えていただければと思う。わたしは、個人事業主としてスタートを切り途中で法人(法人成り)へと切り替えた。永遠のテーマでもある個人事業主と法人どちらが得かの議論になってしまうが、事業規模や他の事業展開有無などによっても異なる。個人規模における書道教室であれば個人事業主で十分である。

 書道教室開塾のために取り組むべきことは意外とたくさんある。学びを提供しこれから長期にわたってやることなので、やはりはじめに決めることの大切さを身に染みて感じている。これから開塾を目指す方々が、少しでも自分の理想とする教室運営ができることを願っている。新たなスタートを楽しんで歩んでいこう。

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