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初心者必見!書作品の「良い素材」と「悪い素材」の見分け方。

初心者必見!書作品の「良い素材」と「悪い素材」の見分け方。

(全てが素材になるわけではない理由とは。)

書家

書家
片岡 青霞
プロフィール


 書道を学んでいて展覧会や公募展へ向けて作品書きをしたことがある方なら一度は取り組まれたことがある素材選び。素材選びとは、何を題材として書くかを決めるものであり、作品を書く上において最初におこなう作業である。この素材選びはとても重要な役割りを担っているが、はじめての方はこの素材選びが上手に出来ずに苦戦をする。何に対して苦戦をするかと言えば、素材の選び方や方法がわからずにとりあえず言葉なら何でももってきて好きに書けば作品になるとどこかで思っている節がある。そのために師匠から“なぜ、この素材なのか?”と、ツッコミをもらってしまうのだか、本人は自分の素材の何がどのようにダメなのかが全くわかっていない。それは、何でも書けると思っているからにあり、書の素材には適したものとそうでないものがあるということを知らないためである。さらに言えば、良い素材とは何か、悪い素材とは何かの違いがよくわからない。よってただただ困惑する。今回は、素材選びが上手にできるようになるための方法を紹介する。是非、ご自身の今後の書作活動に活かしていただければと思う。

素材とは何か

書道の悩みの一つに、「良い素材」と「悪い素材」の区別がつかない方がいる。初心者さんならわかるが、書道の年数を学んでいる方の中にもそのような方がいる。この違いは一体何なのだろうか。photo by Pexels

 書作品を書くための基本となる素材。素材とは、もとになる原料や材料のことで、芸術においては根本的な表現の「核」になる部分と言える。例えば住宅におきかえると、基礎の土台や柱の部分にあたる。いい家を建てるためには土台が歪んでいたり柱が傾いていたらどのような家が建つのか想像ができるかと思う。そのものの中枢を担うため、書作品において素材選びはとても重要なものだということが言える。

作品になるかどうかは、何を書くかの素材選びの時点ですでに決まっている。もちろん、その方がもちあわせている技量や経験、感性など他にも関係する大切な要素はたくさんあるが、作品の核になる素材はその半分(50%)を既にしめているといっても過言ではない。良い書き手は素材選びがとても上手であるが、そうでない書き手は素材選びが下手である。また、良い書き手は素材になるものとそうでないものの選別ができるが、そうでない書き手は何でも書こうとする。では、良い素材と悪い素材とはどのようなもののことを指しているのか実際に見てみよう。

文字への理解はあるか

「猫」(書・手島右卿)

 素材選びをするということは、書く(表現)するための文字を選出するということになる。文字の中には書きやすいもの(表現しやすいもの)とそうでないものが存在している。その視点から考えるとどのような文字が書きやすくてそうでないのかを把握する必要がある。よって、素材選びをする前に文字を知り文字への理解があるということは前提条件ということが言える。

これは手島右卿先生の「猫」という作品です。晩年のもので同じ素材で他にも書いた作品があるようです。これを見て、“手島先生が猫という素材を書いているのだから自分は犬を書こう。”という発想をする人がいますが、これが素材選びが下手な方の陥るパターンとも言えます。「猫」が素材選びに適しているのに、なぜ「犬」は素材選びに適していないのか。「犬」を素材にせず「猫」にした理由は何なのか。または、「犬」ではダメな理由があるとしたらそれはどのような理由であったのか。ここを創造力を膨らませて考えてみることがとても大切なことと言える。
数ある素材の中においてわたし自身も、「犬」という素材を一字書で書いてみようという発想には今後も至らないかと思う。その理由は、画数が少なく難易度の高いことや表現の幅に制限のある文字という認識があるためです。たくさんの文字に触れることで、その文字を知り理解することが何よりも大切なことであると考えています。

「良い素材」と「悪い素材」


「良い素材」「悪い素材」
一字書海、流、途、遂、灯、燃、馳、桜、刻新など。

・初心者は偏と旁の構成の文字から選出すると良い。
・部首から選択する方法もある。
笑、夢、咲、想、器、大、悪、醜、凶、怨など。

・行草体の崩しで表現に制限があるもの。
・文字の意味が悪いもの。
漢字(3~5字)雪月花、一華開五葉、桜花無尽蔵

・墨場必携から季節(春夏秋冬)ごとに文字数別での選出。
・文字の大小、縦長、横広など展開ができる漢字が含まれているもの。
意気投合、単刀直入、弱肉強食

・小、中学生が学校で学ぶような四字熟語。書の技術を習得し、晩年の作品とするなら可。そうでなければ不適切。
漢字(多字数)江碧鳥逾白 山青花欲燃 今春看又過 何日是歸年 (杜甫)

・漢詩の王道は多くの人が書作品にしているため参考になる。
・行草体で展開がしやすい漢字が多く含まれているもの。
長恨歌(白居易)


・長すぎるもの。文字のつぶが小さくなり、漢字がほぼ正方形展開になりやすいため。(40字以上)
・同じ漢字が重複するものなど。
現代文俳句(5・7・5)
短歌(5・7・5・7・7)の構成

・明解でわかりやすいもの。
・詩のいい情景が目に浮かぶもの。
長詩、戦争、情勢、政治、宗教、アーティストの歌詞など。

・悲しく不快な想いになるもの。
・著作権に触れるもの。
かな古今和歌集、小倉百人一首、和歌、俳句
・漢字とひらがなの調和体。
・初心者は文字数が少ないもの。
・和歌や俳句のようなリズムがない文章
・現代風すぎる固有名詞やカタカナ語
・ひらがなのみの構成(難易度高い)
書作品における「良い素材」と「悪い素材」

 書の分野は、漢字(一字書)、多字数、現代文、かななどのジャンルに分けることができる。それぞれ素材選びをする際にはどのような点に気をつけて選出をするといいのだろうか。

良い素材とは、文字を知りその文字への意味や理解があり、また書としての表現がしやすいものである。悪い素材とは、この真逆のものと言える。書には素材をただ文字として書くだけではなく、その素材をどのようにしたら最も活かすことができるかの「表現」を用いてはじめて書作品と言えると考えている。

素材の探し方

書道日常生活
・書道展、公募展の鑑賞
・偉人の作品集
・古典法帖
・書道辞典
・書籍
・暮らし
・旅行
・自然
・娯楽など
書作品の素材の探し方

 実際に書作活動をしている方々はどのようにして素材を探しているのだろうか。素材の探し方には大きく分けて2つの方法がある。一つは、書道関連の中から。もう一つは、普段の日常生活の中にある。

書道展
令和8年 第74回独立書展会場風景

書道関連の中からは、実際に書道展会場へ足を運び多くの方々の作品を鑑賞しながらいい素材を見つけるという方法がある。過去の図録や偉人たちがどのような素材を選んで作品にしているのか、作品集を目にすることで自分も書いてみたいと思えるような素材と出会うことができる。また、日々学習をしている古典法帖から抜粋するという方法も有効的といえる。

何気なく出掛けた先で、思いもがけず素敵な素材と遭遇することがある。photo by Pexels

普段の日常生活の中からは、書道に触れていない日々の生活の中から素材を見つけるという方法がある。旅行へ行った先で出会った場所(名所)、体験、人、見たものなどをそのまま素材にする。たとえ旅行へ出掛けることがなくても、普段の日常生活の中にも書作品の素材にできるものは実にたくさんある。いつもどこかで何か良い素材はないかとアンテナをはっている人は、素材と巡り会う機会が人よりも多いのではないだろうか。一方で、普段からぼんやりと過ごしている人はたとえ良い素材と出会ったとしても見逃してしまう可能性が高い。そのようなことがないように是非普段からアンテナをはってみよう。

たくさんの素材の「数」に触れること

令和8年 第74回独立書展会場風景

 はじめから良い素材と悪い素材が選別できる人はいない。いろんな素材を試してみてたくさんの失敗を繰り返しながら、少しずつ素材選びが上手になっていく。まずは、たくさんの素材に触れることが何よりも大切である。素材選びに優れている人にどのようにして素材を選出しているのか直接聞いてみるのも良い方法だと言える。

素材選びはとても奥が深い。素材選びが上手な人は、マイリストの中に素材のレパートリーが無数に書き留められている。また、いつ何の公募展、展覧会にどの素材をあてるのが最適なのかの調整もしている。是非この段階までになれるよう素材選びの達人を目指してみよう。作品を大きく左右する素材選び、数ヶ月間ご自身が向き合い作品の書き込みをしていくことを考えると、素材選びには入念に時間を割き事前に準備をする必要がある。目安としては、最低でも錬成会がはじまる2か月前までには素材が決まり草稿を作成していることが必須だと考慮している。錬成会でどんなに枚数を重ねても素材選びが適さないものであったらどうだろうか。行き当たりばったりの何となくの作品書きからは、もう卒業をしよう。自ら熟考し書く前の準備をしっかりと整えたうえで作品書きをしていこう。

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