さまざまな書道展覧会の種類(公募展・社中展・グループ展・個展)
(書道展覧会のメリット・デメリットとは)
書家
片岡 青霞
プロフィール
書道を学ばれている人なら一度は何かしらの書道展覧会に出品したことがあるのではないだろうか。小さなものから大きなものまで、全国では今日もたくさんの書道展覧会が開催されている。基本的には誰もが自由に出品できるものが大半ではあるが、中には出品したくてもできないものも存在する。今回は、書道展覧会と呼ばれているものの種類を通じてそれぞれの展覧会におけるメリット・デメリットを紹介しよう。
4つに分けられる書道展覧会
まずはじめに、書道展覧会という言葉は全てを総称した言い方となる。開催規模や人数、作風、傾向など実にさまざまとなっている。これらは主に「公募展」「社中展」「グループ展」「個展」の大きく4種類に分かれる。
「公募展」とは、一般的には全国公募展のことである。住まい、年齢、性別、書歴、社中など一切関係無く、全国的に幅広く作品を公募する展覧会のこと。書道展覧会の規模としては最も大きなものとなる。公募展の中には各都道府県において県内在住者のみによるものも含まれている。基本的には集まった書道作品に対して審査も行われるため賞の有無もある。作品を通じて少なくとも人と競るのが公募展である。
「社中展」とは、各書道教室や一派の同門生によって開催される書道展覧会のことである。所属している生徒一同による展覧会のことであり、毎年開催している教室もあれば数年に一度など教室や団体によって開催は異なる。基本的に賞の有無は無く、日頃の生徒さんの発表の場として設けられていることがほとんどとなる。
「グループ展」とは、親しい書道仲間や友人たちと開催する展覧会のことである。会派や所属などは関係無く構成されている。学生の頃からの友人同士で長きに渡って継続しているグループのものから単発のものまでさまざまとなっている。
「個展」とは、個人による書道展覧会のことである。主催をはじめ進行、準備、集客と全てのことを一人の人物が行う。会場の壁面は全て個人の作品展示となるため、最も労力と金銭的な負担が必要となるのが個展と言える。
このように、書道展覧会は「公募展」「社中展」「グループ展」「個展」の4つに分けられている。公募展のみに賞があり、その他の展覧会では賞が無いという特徴がある。
各書道展覧会のメリット・デメリット
主に書道展覧会とは、「公募展」「社中展」「グループ展」「個展」の4種類に区分けされていることがわかった。次に各書道展覧会におけるメリット・デメリットについて見てみよう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
公募展 | ・美術館に自分の作品が展示される。 ・大きな作品を制作できる。 ・自己の腕磨きができる。 ・優秀な作品へは賞が贈られる。 | ・年会費がかかる。 ・毎年必ず出品となる。 ・作品制作費(用具代・錬成費)がかかる。 |
社中展 | ・自分の作品を発表する場がある。 ・書いた年齢で作品を残すことができる。 ・家族・知人・友人の来訪で新たな交流が生まれる。 | ・普段のお稽古に加えて作品制作への時間が必要となる。 ・作品制作費(用具代・錬成費)がかかる。 |
グループ展 | ・親しい仲間(同士、コンセプト、方向性)での開催。 ・自身の作品点数を多く発表できる。 ・作品サイズの自由度。 | ・出品者の総人数によって必要経費を補う。 (小人数の場合、負担が大きくなる。) ・意思の疎通を密にする必要性。 |
個展 | ・自分の作品のみが会場に陳列。 ・これまでの作品を一同に発表できる。 ・一つの空間の中で個性、テーマ、メッセージを全面的に打ち出せる。 | ・批評や評価。 ・費用全額負担。 ・集客。 ・作品販売の有無により変動する収益性。 |
このように、4つの書道展覧会には上記のようなメリット・デメリットがある。大まかなこれらの要因を踏まえたうえで、自身がどこを主軸として書道活動していくのかを決める必要がある。
例えば、毛筆でお手紙程度が書けるようになれればと思い書道教室へ入塾したが、公募展主体として活動されている団体や教室であった場合にはこの時点において本人と教室間でミスマッチが発生してしまう。公募展主体の教室というのは、本人の意思の有無に関わらず全員参加が基本となっている。一人だけ出品しない意思や金銭的にキツイという内容は理由と見なされない。結果、すぐに退塾となるため入塾前に書道展覧会へどのような関わり方をしている書道教室なのかを調べる必要がある。
年間における書道展覧会への作品出品点数
全国では年間を通じて非常に多くの書道展覧会が開催されているが、これら全てに出品している人はまずいない。数ある中から年間数点の作品を出品している人がほとんどとある。ちなみに、自身は以前に年間8作品出品していたが、現在は4〜5作品の出品数となっている。数は減らしたが、「公募展」をメインとし、三年に一度の開催で「社中展」が入ってくる。
年間におけるこの作品出品点数は決して多くはなく、スタンダードであるかと思う。多い人だと年間10作品出品している先輩や先生方もいる。このようになると常に作品書きに励むこととなる。あまりにも数が多くなるとキャパオーバーとなるためこれはこれで問題だとは思うが、何も着手せずに腕の向上だけを望むよりははるかにいい選択なのかもしれない。技術を習得したい学びたいけれどどうしても時間と金銭が気になるのであれば、勇気を出して何もしない学ばないという選択肢もあるということを覚えておこう。
書道展覧会への作品出品数は多すぎると一作にかける時間が少なくなる。十分な書き込みができずに終わってしまうので未消化の作品となる可能性が高い。一方、作品出品数が少なすぎると技量の差は開く。同期と書道をはじめたタイミングがたとえ同じであったとしても数をこなしていなければ経験値は積み上がらない。数が必要な時期というのは必ず存在する。多すぎず少なすぎず。この見極めが難しいのかもしれない。
書道展覧会への参加方法
書道展覧会は全ての総称であり、主に「公募展」「社中展」「グループ展」「個展」の4つがある。それぞれの書道展におけるメリット・デメリットを踏まえ、ご自身が書道を通じてどのような活動をしてみたいのかを決めることができる。最後にこれらの書道展に参加するにはどのような方法があるのかということを紹介する。
「公募展」は、全国規模で作品を募集しているため大抵の場合は個人出品から応募が可能となる。唯一出品できないものとしては、県内在住者のみに規定されている書道展覧会だけではないかと思う。展覧会には応募資格が記載されているので必ず確認をしよう。全国規模の公募展は各HPへアクセスをし申込み出品票を記載し作品郵送の手順となる。
「社中展」は、どこかの書道教室に入会する必要がある。書道教室によっては、社中展を毎年開催しているところや数年に一度のところ、また一切開催しないところとさまざまとなっている。入塾前に必ず確認をしよう。
「グループ展」は、親しい仲間同士で開催することができる。最低でも自分ともう一人(二人以上)いないとグループ展として成り立たないため仲間同士による同意が必要となる。同じ志の方を探して声を掛けてみることからはじめよう。
「個展」は、個人による作品展示となるため、自分の意思さえ固まればいつでも開催することができる。しかし、最低でも一年以上前から個展へ向けて準備をする必要がある。全てのことが個人にのしかかるため一番の労力を要するのが個展となる。チャレンジしてみたい方は是非頑張ってみよう。
机上の上で書の学びを深めることは大切なことではあるが、これまでの学びを発表する場や何よりも今の自分の実力を自分自身が把握するために書道展覧会を活用するという方法がある。書道展覧会があるからこそそこに向かって取り組むという目標ができる。学びのスタートラインは、己の腕の無さを把握した時からはじまるとされている。自己満足で終わりたくない方や腕を磨きたい方、向上心がある方は熱量高い人々と共に研鑽しよう。
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