
【全ての書道愛好家へ】書道上達のために欠かせない歩み
(急成長する者が必ず通過する道のりとは。)

書家
片岡 青霞
プロフィール
世の中には年齢を問わずたくさんの書道愛好家がいる。趣味として嗜む人から本気になって打ち込む人まで様々である。どのように書道と向き合うのかはその人次第であるが、取り組む過程の中で段階が変わっていくことは十分にあることである。好きで始めた書道ではあるが、取り組む過程の中でもっと上達したいという思いは今も私の中で継続している。コンスタントに継続することも大切ではあるが、より上達していきたいという方々にとっては必ず通る道が存在している。ここを通らずして急成長はないと言っても過言ではない。書道上達のために欠かせない歩みや過程とはどのようなものなのかについて考えてみたいと思う。
燃える闘魂

書道の腕が急成長する者が必ず通過してきた道のりとは一体何か。 それは、「ある一定期間」特に力を入れて書道をやってきたという経験を必ずもっているということである。 長く継続することが出来ており、尚且つ人よりも頭一個分突出している人たちを見ていると、いつも一生懸命取り組んではいるが特に振り返ってみればこの期間はかなりやり込んできたという経験と過程を必ずもっているという共通点がある。
寝ても覚めても書道。頭から離れることはなく自分の空き時間は書道に当ててきたという人である。ここで注意したいのがずっとこの状態であるということを言っているのではなく、 あくまでも「ある一定期間」としていることだ。どんなに熱い人間でも沸騰した状態を継続することは不可能に近い。人間なのだから波があることはごく自然なことと言える。長年たくさんの書道愛好家の人を見てきての今の私の答えは、「ある一定期間」特に力を入れて書道と向きあうことができた者の中から急成長へ繋がるかどうかのキップが与えられていると思っている。
この「ある一定期間」とは、目安として2〜3年と思ってもらっていいかと思う。たった2〜3年で急成長できるの?と思うかもしれないが、とことんやりこんでこの期間を過ごすことができるのであれば急成長は可能であることを示したい。もっと分かりやすく一つの指針を示すのであれば、半紙臨書は1ヶ月1000枚。これに加えて年間における書道展への作品数点。 1作につき300~400枚の書き込み。これらを2~3年継続できるのであれば、十分に急成長するキップを手にしたと言ってよいかと思う。この量を2~3年やるというのは、頭で考るよりも想像以上に大変なことであるため中々多くの人は継続することができない。コンスタントに教室に通うことすら難しい人もいる中、さらにその上をいく。言うは易く行うは難し。急成長を望むのであれば、この「ある一定期間」を過ごした者の中からでしか生まれない。言い方を変えると、コンスタントに自分の心地良い状態で学びをしているのではなく、やや苦痛や負荷を与えて急成長する人の枠に自分をはめ込む必要があるということである。これらができる人はそこまで多くないがきっと大丈夫。元気があれば何でもできる。
あなたはどのタイプ?

人間には心がある。その人の心が書道に対してどのような情熱を燃やしているのか。 “自然性、 可燃性、 不燃性、 消化” あなたの心は書道に対してこの4つのどのタイプに当てはまるであろうか。
世の中には、自らやる気に満ち溢れ何かを成し遂げようとする自然性タイプの人がいる。 自ら燃えあがる情熱をもち合わせており、人がどうとか周囲がこうだから世間があーだ。などということは一切関係なく指先はいつも自分自身に向けることができるタイプの人間である。人の影響ではなく自分で燃え上がることができる。経営者やリーダータイプの人は必ずと言ってもいい程、自然性の人間である。
自ら燃えるほどの積極性はないが、すでにやる気ある人の影響を受けて自分も頑張ろうと思える人は可燃性タイプの人である。1人で自宅で書道をやっていてもこれであっているのか指針となるものが何も無い状態で頼れる人も仲間もいなかったが、 共に同じものを学ぶ環境に自分の身を置くことで良いエネルギーや波動の影響を与えられ、自分のモチベーション向上や周囲と共に一緒に燃え上がることができる人間。一番の秘めた才能をもち合わせているのがこの可燃性タイプの人間だと思っている。
周囲がやる気に燃えていても全く燃えないのが不燃性タイプ。 自然性や可燃性の人たちとは エネルギーや波動が異なるため、同じ書道をやっているにも関わらずこれらの人たちとは距離を置いてしまうこととなる。どんなに熱量をもって言葉を発しても反応がイマイチな人のことである。このタイプの人間は何か物事を継続するということには至らず、常に不満と愚痴をこぼしている。あなたのようにやる気のある人間が苦手なようなのでなるべくなら関わらないことをオススメする。
最後に、世の中には人のやる気を完全に消してしまう消化タイプの人がいる。ろうそくの火をふーっ、ふーっ。と一噴きでふき消すかのように自然性や可燃性タイプの人のやる気を消して回る人間のことである。このタイプの人間にアドバイスなどは特に無いが、自宅のソファーで寝っ転がりながらテレビでも見ているほうが無難であろう。
さて、あなたはどのタイプの人間だろう。
書道あるある。燃え尽き症候群タイプ。
「あんなに一生懸命やっていたのに、 辞めちゃったんだね。」
皆さんの周囲にも必ずこのタイプの人がいるだろう。 そう、燃え尽き症候群タイプである。 燃え尽き症候群タイプというのは、一気に書道に対してメラメラ燃え上がり、一気に鎮火するタイプの人間のことである。 情熱を傾ける期間はとても短く熱しやすく冷めやすい人のことである。
燃え尽き症候群タイプの傾向としては、展覧会や公募展への作品書きを自分なりに一生懸命取り組み達成感と満足感でいっぱいの感情に満ち溢れ、展覧会が終了した後に自分も終わる。ということはよくある。生徒を頑張らせると人が辞めることに繋がることを考慮して生徒に対して頑張らせないようにしている書道教室もあるというのだから驚きである。展覧会や公募展の度に辞めているようでは、私は年間に一体何度書道を辞めなくてはいけないのだろうか。笑い話である。今すぐに書道をはじめたい!と、電話越しに前のめりな様子がとても伝わってくる問い合わせをもらった時程警戒心が高まることは否めない。なぜなら燃え尽き症候群タイプの人間である可能性が非常に高い傾向にあるからだ。 このタイプの人間は、見学・体験の予約だけをして前日や当日に“やっぱり行けなくなりました。”という お決まりのパターン展開をきれいに決めてくれる。ある程度 長く経験をしていると最初のメールや電話の段階でどのタイプか把握できるようになる。 そこまで分かりやすく示してくれなくてもいいかと思うが、とても分かりやすく自分が燃え尽き症候群タイプの人間であるということを提示してくれる。はじめる前段階の時点でこの様子なのだから、 仮にはじまったとしても先行きの想像が簡単にできてしまうものだ。人間は何かをしたい、何かを学びたいという生き物なのかもしれない。しかし、この様子でいけば遅かれ早かれ本人が辛い思いをしてしまうかと感じる。思い切って「何も学ばない。」 選択をするべきではないだろうか。ということを、是非提案したい。
息長く、最も美しい燈心

書道上達する人たちの中で、 急成長をする人々には「ある一定期間」 特にやり込んだ期間が必ずあるという共通点が存在している。 長くこの世界にいて書道が上手いなと思う人たちに是非聞いてみて欲しい質問がある。 “これまで最も書道に取り組んだ時はいつなのか。どのくらいの期間と量をこなしてきたのか。”と。
「ある一定期間」このわずかな期間はこれまで以上に自分に対して負荷を掛けることとなる。2~3年特に強化してやり込むという期間を設けた後は、何もしてなくていいのかということでは勿論無い。学びはその後も継続をしていくが決して常にメラメラ燃える必要もないと思っている。人間とはとても弱い生き物である。これをしよう。こうしていこう。と一度は心の中で決めた事なのに私は何度自分を裏切ってきたことか。人間が完璧な存在でないこともまた人間らしいと言えるのではないだろうか。 自分でやってみてはじめて本当にその人のすごさを痛感することになる。上手に自分の炎とお付き合いする必要がある。 例え小さくても炎がついている限り伸びしろは無限大であることを忘れないでほしい。 人が炎を見て美しいと感じるのはどのような炎だろうか。その炎はいつも温かく優しい光を放っている。 時間を忘れて長く見ていられるその炎は決して派手さはないが、同時に消えることもない。今日もあの人が 一際美しい炎を放ち周囲を明るく照らしている。