
40歳を過ぎてからあらわれた身体の変化
(書道をやるために必要な身体づくりとは)

書家
片岡 青霞
プロフィール
20代の頃から共に書道を学んできた同期数名と久々にお会いする機会があった。そこで話題にあがるのは、20代の頃に比べて誰もが自身の体力の衰えを感じているということであった。あの頃は、朝方まで寝ずに書きそのまま錬成会へ行った経験を誰もが一度は経験をしていてよくそんなことができたものだなと感じている。あれから15年。今では誰もが睡眠や休息は欠かすことができないものとなっている。女性だけではなく男性も同様に感じているのだから、年齢には逆らえないものがある。ただ、まだまだ先があるわたしたちにとって今のまま年齢を重ねてしまったら、70、80代の時には書道どころではなく、もしかしたら歩くこともままならず寝たきりになってしまうかもしれない。そうならないためにも、今から晩年も元気に書作品を書けるだけの体力づくりをする必要がある。今回は、若い頃に感じることが無かった身体の変化とともに、書道を長く楽しむために取り組むべきことについて紹介してみようと思う。
書道はアクティブなスポーツである

書道には2つある。一つは、机上の上で書く小さな半紙。もう一つは、床で書く公募展や展覧会の大きな規格外サイズである。書道と聞くと、心静かに和室で書くことをイメージする人がほとんどかもしれないが、実際に書道を学んでいて作品書きをする人たちからするとこのようなイメージよりも、書道はアクティブでハードなスポーツだと答える人がとても多い。
半紙のみを書いている分には、特に準備に手間暇もなく座ってできるものではあるが、書作品を書くとなるとそうはいかない。動きながら書いていくため、立ったり座ったりの動作を何度も繰り返す。また、準備や片付けから含めると事前に墨を用意したりもするので時間もかかる。展覧会や公募展へ向けての錬成会を実施している教室では、定期的に作品書きを月1回半日にわたって開催している。中には、合宿をするところもある。半日、作品書きをするとほとんどの人たちは心地よい疲労感に包まれるが、あまりにも体力が無いと心地よいものでは無くなってしまうことがある。そうならないためにも、書作品を書くための体力づくりは必要なものであると考えている。
現代の70、80代の先生方は、とにかく元気な方々が多い。特に足腰の強さを感じるが、これは生まれ育ってきた長年の環境が大きく影響をしていると考えることができる。幼少の頃から、田舎であれば田植えの手伝いをしたり、交通機関がまだ発達していない時代においてはよく歩く。家中においては、椅子よりも床に座る。生活や暮らしそのものの中で、常に身体を動かす動作が多く、身体を鍛えようと思わなくても普段の日常生活を送ることで十分に身体を動かすことができていたのである。そのため、書道を学んでいる70、80代の先生方はとても若々しくて元気な方々が多い。現代人はこのまま年齢を重ねても多くの人はそのようにはならないことが考えられるため、長く書道をやり続けていきたいのでたれば、自身の健康や身体づくりを何かしら考えて取り組んでいくことが大切ではないかと感じている。
半月板逸脱の診断結果

自分にできる健康と身体づくりのために、走ることが苦手なわたしは歩くことなら何とかなるかなと近所の散歩からはじめてみた。教室の生徒さんからお誘いをいただき、尾瀬ヶ原を歩きに行くことになった。事前にあまり下調べをせずに連れていってもらったのだが、自分の想像以上に広大な自然を目の当たりにして感動を覚えた。この時はあまり山には興味はなかったが帰宅してから調べてみると、まるで日本とは思えないような光景の場所がたくさんあることを知った。近所の散歩からはじまり、尾瀬の散策をきっかけとして興味関心が徐々に山へと移行していった。
年齢を重ねても自分の足で歩けることを目標として登山をはじめた。いくつか山を登ってみては、今度はあの山を登ってみたいと思っていた頃、下山中に今までに感じたことのない膝の痛みがあった。早めに病院を訪れレントゲンとMRIの撮影をしてみると、診断結果は半月板逸脱、変形性膝関節症の初期とのことであった。膝の間のクッションが正常な位置よりも外側へはみ出しており、歩行するたびにあたって痛みが生じていた。これから頑張っていきたいなと思っていた矢先のことだったため、思うように歩くことができないことをとても残念に感じた。手術の段階へはまだ早いため膝回りの筋肉強化や常備薬、サポーターやストックなどを活用してできる範囲で山を楽しむことにした。若い頃には感じなかった関節痛。40歳を過ぎて少しずつ自分の身体も変化しているのを感じざるを得ない出来事となった。
紫外線が怖い。酒さ(しゅさ)の肌疾患トラブル

身体の変化を徐々に感じることもあれば、ある日突然襲ってくる異変もある。
数ヶ月ぶりに登山へ出掛けた日のこと。久しぶりで身体も慣れないため、低山で比較的距離が短いコースを選択した。下山まで無事にすませ、ふと鏡に映った自分の顔を見るといつも以上に顔が真っ赤になっていた。まだ4月で気温もそこまで高くなく、終日曇りであったにも関わらず顔のみが赤い。日焼け止めやUVファンデーションはいつもと同じものなのに、顔を触ると熱を感じる。保冷剤で冷やしてみたりもしたが、こちらもこれまでにない異常を感じたため後日皮膚科を受診した。診断結果は、酒さ(しゅさ)という肌疾患の病気とのことだった。
酒さの主な原因は人によってさまざまでわからないことが多いようだが、私の場合は紫外線が原因により発症をした。女性に多いことや顔のみが赤くなる特徴があり、完全に完治をさせることは難しいとのことであった。どのような治療法があるのか調べてみると、美容医療、サプリ、塗り薬、スキンケア、食事改善などがありできる範囲での治療に取り組んでいる。治療から半年以上が経過しているが、以前よりはやや改善が認められているので気長に治療にあたりたいと思っている。
女性に多いことを考えると、女性ホルモンが関係していることがあるのかもしれない。また、女性は生理もあるので年齢と共により身体が変化しやすいことも考えられる。いずれにしても40歳付近は身体の変化を如実に感じる年齢なのかもしれない。
書作品を書くための、身体づくり

私のように、健康と身体づくりのためにはじめた登山によって、膝を負傷したり肌疾患をともなっているようでは本末転倒ではあるが、書作品を書くための身体づくりは何かしら必要かと感じている。
現代の人が高齢になった時に、今の70、80代の方と同じように書活動をするためには、今から身体づくりをしていく必要性があると感じている。周囲の書活動をしている人の中には、マラソンやジムに通っている人もいるが、一番の健康法は普段から定期的に歩くことが最も健康に良いものとして掲げられている。人間は年齢とともに老いを重ねるが、これは誰もが通る道なので逆らうことはできない。しかし、動ける身体づくりを普段から心がけることで、健康寿命を伸ばすことはできるかもしれない。身体がすべての資本であり、健康な体があってこそ好きなことができるため、ご自身のためにも見つめ直すきっかけになっていただけたら幸いである。年齢を重ねながら素敵な書活動を長く楽しむために今から準備をしていこう。
