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【要注意】素人がカモにされる「書道師範」という魔法の言葉

【要注意】素人がカモにされる「書道師範」という魔法の言葉

(カモにされないための知識の大切さ。)

書家

書家
片岡 青霞
プロフィール


「私、書道師範の腕前です!」と言えば、世間一般からはそれはすごいと拍手絶賛の嵐となるのだろうか。書道師範というものがどのようなものなのか知らなくても、ネームバリューが先行してすごいものと感じる人が一般的であると思う。一時の書道ブームからは落ち着つきをみせているが、あちらにもこちらにも書道師範がたくさん存在していた時期があった。今現在もその傾向はあり、どの時代においても素人がカモにされてしまうということがあるようだ。言葉だけが一人歩きしているように感じるが、書道師範とは一体何なのか。そもそもそんなにすごいものなのか。その謎に迫る。

書道師範は国家資格ではない

たくさんの資格を取得するだけで活かせなかったら意味が無い。資格を取得した上で、その先どうなりたいのかまで考えよう。

 はじめに結論として、書道師範はすごくも何ともない。

 話は以上です。…としてしまってはあまりにも味気ないため、書道師範がなぜすごくも何ともないのかについて考察していきたい。 ネームバリューで書道師範という言葉に対し、何だかよくわからないけれどすごいものと感じてしまうのも全く不思議ではない。書道だけに限らず、「師範」という言葉がそうさせている。そもそも書道師範を取得している人達でさえ、これが一体何なのかを把握している者が少ないように感じている。書道師範とは、全国数百から数千あるとも言われている書道団体や教書雑誌による一つの目安として位置づけられているものにすぎない。なので、書道師範取得のための試験内容や費用は勿論異なる。審査をする先生は、所属している団体の先生方がおこなう。書道師範を取得したと言っても、審査する先生が各団体によって異なるため、合格基準なども千差万別となりばらつきが生じる。 

 書道師範は国家資格ではない。 なので、これを読んでいる方が明日からでも書道教室を開塾しようと思えば、いつだってスタートすることができるということになる。国家資格ではないため言葉を言い換えれば、書道の腕が無くても誰でもできるということである。ということは、書道を教えている者の中にも多くの素人が混在しているということである。その目利きをするのは、これから書道を始めようする者に委ねられているのであるからこれまた大変な話である。実際に、こんなに適当で大丈夫なのか。と首を傾げたくなるような書道教室も存在している。技術職を提供している者として学びに終わりはなく、その道に携わるということはこれからも終わりなき学びをしていくということを意味する。高い志を持ちうることは大切なことであると考えている。

書道師範取得のためにかかる費用

はたらけど はたらけど 猶わが生活 楽にならざり ぢっと手を見る(by 石川啄木)

 書道師範というものに謎が多くても、神様のように崇拝されていたら分からなくても凄いものが成立してしまう。多くの場合、 書道教室を立ち上げるために書道師範の資格取得が必要だと誤解をされているが、これは明らかに間違いである。先にも述べたように、書道師範は国家資格ではない。ある一定団体の中でのみ有効なものとしての位置づけとなっている。

 書道師範取得のための費用は各書道団体によって異なるが、数万から数十万と金額に幅がある。 知り得るところで、書道師範取得のための費用およそ50万円のところがある。ここに含まれるものとして、試験代、免状、看板代、雅号代などがある。全国にはもっと費用が高いところもあるかと思うが、これでも十分に破格な金額だと言えるだろう。前提として、全ての書道団体において書道師範取得ができるということではなく、各書道団体においてそのような制度を設けているところもあればそうでないところもある。また、個人で経営する書道教室においては先生の考えにおいても様々である。書道師範を設けている団体に所属している先生であっても、意味のわからない破格の金額に疑問を抱いている先生方は決して弟子に強要をしない。意味の分からないところに金額を費やすのであれば、筆の一本でも購入し自分の勉学に役立てるほうが良いと考えているからである。
 
 書道師範が、どのようにして案内されるかについて。書道師範を取得することも可能ということを打ち出している書道団体や書道教室では、大抵の場合書道をはじめてすぐの方に書道師範の話はしない。ある程度、通い慣れた頃に内容と金額の提示がされる仕組みとなっている。特に10代後半、20代の若者にとって50万の金額を自分ですぐに用意できる人はそんなに多くないのではないか。提示された金額は高額だったがせっかく書道師範を取得したいと思いはじめた書道だから辞めたくない。そんな素人の気持ちに対しあたかも心配しているフリを見せ、平然とした顔で普通にローンを組ませる。分割払いで12回、24回、36回。これだけ月々の負担を減らして返済することができるということを提案してくる。相手が首を縦に振るまで分割回数を増やして金額提示がされる。人の心理をうまく利用した方法が組まれているため、素人は特に気をつけなくてはいけない。

 書道師範取得することができるということがホームページに記載されている場合、金額の提示がされているところはまだ良心的だと言えるが、文言のみで金額提示がない場合大抵の場合表には出したくない、人には知られたくない破格な金額である場合が多い。注意が必要である。

知識を身につける大切さ

 借りることは簡単だが、月々の支払いの圧迫によって日常生活が苦しくなるようなことは避けなくてはいけない。奨学金、住宅、カード、 マイカーローンなど。たくさんのローンを抱えたままの状態では、自分の本当にやりたいことに費やす時間とお金はますます無くなってしまう。書道師範が国家資格ではないということをきちんと把握し、書道教室を開塾する上で書道師範の資格は一切必要がないということを知識として認識し、それでも取得をしたいという方は書道師範取得のために是非頑張っていただきたいと思う。しかし、ほとんどの場合知識がない状態で「師範」という言葉に踊らされてしまうことが未だに多いように感じている。

 ここで重要なことは、「知識」を自ら身につけるということである 。小中高と学校へ通えば勉強を教えてくれる。学校を卒業したら大人は何も学ばなくていいのかと言われれば決してそうではない。大人になってからの勉強とは社会で必要な学びとなるため自ら率先してやる自主学習ということになる。大人になってからの勉強として一番多く触れるものが社会学と言えるだろう。お金に関する勉強をほとんどしたことがないまま社会に放り出され、 たくさんのローンに対する知識もないままサインをする。お金や書道師範に対する知識がある状態ならどのような選択をしているかということである。

 いつの時代も何も知らない素人はカモにされやすい。誰も教えてくれなかった。知らなかった。という言い訳で事が片付けられる場合もあるが、世の中には取り返しがつかないものも存在する。事前に自分で調べてさえいれば良かったことを日々の忙しさを理由に軽視したがため、取り返しがつかない選択をしてしまったケースもあることだろう。現代においては一人一台スマホを所有している。検索ツール、検索ワードの2つがわかれば自分で調べて答えに辿りつくことはごく簡単な作業である。「知識」は、自分のことを守ってくれる強い味方となる。無知な者が支払う代償はいつの時代も大きい。 

書道をビジネスにしないために

好きではじめた芸事。初志貫徹。何をきっかけにはじめたかということを忘れずに大切にしていきたい。

 書道師範を取得しているからすごいということはなく、 あくまで各書道団体が設けた一つの目安にすぎないということを把握しておく必要がある。

 また、履歴書に資格として各書道団体で取得した級や段を記入することはできない。級や段に関しても同様のことが言えるからである。唯一記載できるのは、文部科学省が後援している硬筆・毛筆書写技能検定くらいだろうか。これは文部科学省後援の検定試験となるため履歴書に資格として記載することができる。 

 何かを学ぶ上で、やりがいや目標はとても大切なことだと考えている。書道師範を目標として書道を学んでいる人もたくさんいると思うが、前提として正しい知識を把握した上で取得するかしないかの判断ができるとより良いのではないかと思う。 たくさんの書道団体が様々な形式で書道師範の定義を決めている。団体や組織を維持するためには一定の金額は必要であろう。しかし、ビジネスが主体的となり素人をカモにする異常な金額提示においては同じ書を志す者としていかがなものかと考えている。モノの金額が妥当なのかそうでないかを把握するには、比較対象が必要となるだろう。相場を知る。とても大切な前段階の作業である。
 芸術が世や人に与える影響は想像以上に大きい。その背景には人がいる。そのものを手がけている人の手によって芸術が生まれているということを決して忘れてはいけない。

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